札幌地方裁判所 平成2年(わ)573号 判決 1990年10月24日
本店所在地
札幌市豊平区豊平三条七丁目三番二〇号
有限会社カスタム電建
代表者代表取締役 鈴木邦夫
本籍
札幌市西区西野四条二丁目一一番
住居
同市西野四条二丁目一一番一〇号
会社役員
鈴木邦夫
昭和一二年一〇月二〇日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官植村誠出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
1 被告人有限会社カスタム電建を罰金一五〇〇万円に処する。
2 被告人鈴木邦夫を懲役一年に処する。
被告人鈴木邦夫に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社カスタム電建(以下、「被告会社」という。)は、札幌市豊平区豊平三条七丁目三番二〇号に本店を置き(昭和六二年九月二〇日移転前の本店所在地は、同市西区西野八条二丁目一一番一六号)、住宅の建築、販売等を目的とする資本金一〇〇〇万円の会社であり、被告人鈴木邦夫は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人鈴木邦夫において、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注加工費を計上するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和六〇年六月一六日から同六一年六月一五日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が六六一六万二七六八円であり、これに対する法人税額が二六二八万一一〇〇円であるにも拘わらず、同年八月一四日、同市中央区北七条西二五丁目所在の所轄札幌西税務署において、同税務署長に対し、被告会社の所得金額が三六三二万二七六八円であり、これに対する法人税額が一三三七万四三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年八月一五日を徒過させ、もつて、不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額との差額一二九〇万六八〇〇円を免れ、
第二 同六二年六月一六日から同六三年六月一五日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億八八四六万五七七九円であり、これに対する法人税額が七七二六万六二〇〇円であるにも拘わらず、同年八月一二日、同市豊平区月寒東一条五丁目三番四号所在の所轄札幌南税務署において、同税務署長に対し、被告会社の所得金額が七一三一万六三〇二円であり、これに対する法人税額が二八〇七万一九〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年八月一五日を徒過させ、もつて、不正の行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額との差額四九一九万四三〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人鈴木の当公判廷における供述
一 被告人鈴木の検察官に対する供述調書四通
一 小島博の検察官に対する供述調書
判示冒頭の事実について
一 登記官作成の登記簿謄本
判示第一、第二の各事実について
一 大蔵事務官作成の調査事績報告書
一 大蔵事務官作成の外注加工費調査書
一 検察事務官作成の捜査報告書(甲4号証)
一 押収してある法人税決議書(平成二年押第一八〇号の1)
判示第一の事実について
一 遠藤才一郎の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 森宗一、村上智作成の各答申書
判示第二の事実について
一 柴田悠也、古川進の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 東谷陽三、高畠要二、小西義男、中川章、中田房雄、今村羊子作成の各答申書
一 大蔵事務官作成の完成工事高調査書、租税公課調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、土地売却益調査書、事業税認定損調査書、現金及び預金調査書
一 検察事務官作成の「経費明細帳写しの作成について(報告)」と題する書面
(法令の適用)
罰条 被告会社につき、各法人税法一六四条一項、一五九条、被告人鈴木の判示各所為につき、同法一五九条一項(懲役刑選択)
併合罪加重 被告会社につき、刑法四五条前段、四八条二項、被告人鈴木につき、同法四五条前段、四七条本文、一〇条(判示第二の罪の刑に加重)
執行猶予 被告人鈴木につき、刑法二五条一項
(量刑の理由)
被告人鈴木は、本件当時、被告会社が住宅、マンションの建築ブームに乗つて予想以上に売上を伸ばし利益をあげたところから、自らの健康に対する不安及び右ブームが去つた後に備えようと、外注加工費の架空計上等により所得を秘匿するなどの不正な行為により、二期にわたり、被告会社の法人税合計六二一〇万一一〇〇円を免れたもので、逋脱額は多く、逋脱率も平均六〇・六パーセントであつて高く、下請会社等に働きかけて協力を求めるなど計画的な犯行態様にも鑑みると、犯情はよくなく、被告人らの刑責は軽視し難いものといわなければならないが、本件が摘発された結果、被告会社においては修正申告をし、所得税、重加算税等合計一億三一一六万円余を全額納付しており、経営体制も改めようとしているなど、反省改悛が認められること、本件が発覚したことにより、新聞やテレビで報道されるなどして相当の社会的制裁も受けていること、なお、被告人鈴木についてはこれまで前科がないことや健康状態など、被告人らのために斟酌すべき事情もあるので、これら諸般の事情を総合勘案して、主文のとおり量刑した。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 龍岡資晃)